秦 基博インタビュー

マンスリースケジュール「FULL THROTTLE」ではお伝え出来なかった秦 基博のインタビュー特別編集版を今回この特設ページにて公開致します。是非ともご覧ください。

2006年のメジャーデビュー以来、数々のリリースを重ね、2009年には武道館公演(即日完売)も成功させた秦 基博。ちょうど11年前の3月22日に初めてライブを行ったF.A.D YOKOHAMAにて2010年の同じ日にライブを行うにあたり、当時を振り返っての話や当日への意気込みなどを訊いた。

puf-322—1月13発売のシングル「アイ」に続いて3月3日には弾き語りアルバム「BEST OF GREEN MIND ’09」がリリースとなりますが、両方に収録されている「アイ」はどのようにして出来た曲なのですか?

これは、1つは”愛情”の”愛”をテーマにした曲をずっと作りたくて、でもすごく普遍的で大きいテーマなのでやっぱり難しかったと言うか。それをこう自分なりに歌うという事に、いつもトライしてはダメでトライしてはダメでという事を繰り返していたんですけど、ちょうどこの曲が出来始めた頃にデッサンと言うか、ワンコーラス分くらいバーッと出来た時、ちょっとその”愛”みたいな大きい事を歌ってもいいかも知れない曲だなぁ、っていう風に思えて、そこから”愛”というものをテーマに時間をかけて言葉を選んでいったんですけど。始まりとしては、やっぱりそのもちろん”LOVE”、”愛情”の”愛”が最初にあって、あとは孤独な”僕”という男がいて、そのI amの”アイ”だったりとか、出会いの”アイ”とか目の”アイ(EYE)”とか。色んな意味合いが含まれていて曲が出来ていったので、タイトルは、カタカナにしたんですよね。

—どんな時に歌詞や曲を作るのですか?

基本的には作ろうと思わないと出来ないんです。ごく稀になんかこう鼻歌がパッと浮かんだりとか、あと歌詞なんかは普段の生活をしている中でふと思いついたりする事はありますけどね。基本的にはギターを持たないと作れないですね。それで何か元を作ってそこに歌詞を書いたり、逆のパターンで歌詞だけ先に作って曲を書く事もあるんですけど。

—弾き語りをやる上で大事な事はありますか?

そうですね。ライブっていう事で言うと、やっぱりお客さんが今どう感じているかを、より感じられるようにしたいなっていう風に思いますね。それによってその日の歌が変わっていくんですよ。例えば、お客さんがすごい笑顔で聴いてくれてたらそういう気持ちで自分も歌うし、泣いてたらそれに対してどう返してあげたらいいか、とか。“歌って感じて歌う”みたいな、それが出来るといいなぁと思ってますね。特に弾き語りは、例えばお客さんがまだちょっと暖まってないなって思ったら、前奏を長くしても誰にも迷惑掛からないじゃないですか(笑)、1人だから。なんかそういう緩急が付けられるといいなと思っています。”LIVE”っていうか、それがステージ上で自由に表現出来るといいのになぁって、いつもそれをやりたいなぁとは思ってはいます。

—3月22日は初ステージからちょうど11年目ですね。当日への意気込みを聞かせて下さい。

いやぁ、すごい楽しみですねぇ。11年前に自分が出た時も弾き語りイベントの日で、多分F.A.Dに割とレギュラーっていうか弾き語りイベントによく出ていた方の中に紛れ込んでやらせてもらったという記憶があるので、そういう雰囲気が出るといいなと思います。なんか変にかしこまるって事じゃなくて、F.A.Dの弾き語りイベントにみんな来たよっていう雰囲気になるといいなって、それを楽しんでほしいなって思いますね。自分もやっぱりそうだったんで。あぁ、こういう表現をする人がいるんだ、とか。あとはお客さんの前でやるってこういう気持ちなんだ、とか。そういうのを本当にもう全部、何から何まで感じた日だったので、一緒に出てくれる人達にとっても何か刺激の感じられる日になってくれたらいいのかなぁと思いますけどね。

—初ステージの事を覚えていますか?

えーと(笑)、お客さんも5人くらいですかね?5人もいたかなぁ?なんか友達をとにかく呼んで5人くらいいたと思うんですけど。緊張しっぱなしだったけど、でもなんか緊張感とか、あとずっと今まで自分の部屋で歌っていたオリジナル曲を初めて人前でやって、その喜びみたいなものを感じた日でした。すごく楽しくて。それでふとつい本当、昨日ぐらいに思い出したんですけど、YOU TUBEで(3月22日のライブ共演者募集ページに)投稿してくれた人達の映像をちょっと見ていたんですよ。そしたらその楽譜っていうかノートみたいのを立てて歌ってる人がいて、それを見た瞬間当時のことをバァーっと思い出して。僕も大学ノートを持って(笑)譜面立てに置いてたなぁと。そんなのちょっとおかしいじゃないですか、今考えたら。もうとにかくギターも音をどうやって出したらいいか分からないから、多分最初に出た時マイクで拾ってもらったと思うんだよなぁ。ピックアップもついてなくて。それぐらい無知な状態で乗り込んでいったんで。

—11年前の自分に声を掛けるとしたら何といいますか?

掛けたくないですね(笑)。でもなんか根拠のない自信と、そのくせ何も分からないまま向かっていく、みたいな状況でF.A.Dに出て(F.A.D社長の)橋本さんと出会って、音楽を通して色んな人と出会った事で色んな事を知って、という事の繰り返しで今があるような気がするので。まあ、「そのまんまやればいいんじゃないか」と(笑)。出会いに対してまっすぐでさえあれば、変にひねくれなければいいのかなと思いますけどね。あとはもう、やるしかないっていう感じで。今もそんな感じですけどね。

—F.A.DやLIZARDに出ていた頃と、変わった所はどこでしょうか?

一番変わったのは聴いてくれる人が増えたって事ですね。それってどう歌うかとか、どういう曲を書くかにも影響するんですよね。F.A.DとかLIZARDに出てた時は、歌ってみたもののどこに響いているのかな(笑)っていうのが分かんないまま、でもそれを橋本さんに聴いてもらって「こうなんじゃない?ああなんじゃない?」って色々アドバイスをもらえたのはすごい良かったなと思いますね。それがなかったとしたら本当に投げっ放しというか。ただ当時は、試行錯誤を繰り返すばかりだったんですね。でも今だと自分がいいなって思って作ったものに対してもいいって言ってくれる人がいるっていうだけで、じゃあもっともっと伝えられるように歌いたいとか、もっと分かりやすい言葉で書きたいとか、そういう風に作品づくりもライブにおいても意識がどんどん明確になっていくなっていうのがあって。

—お客さんのリアクションも例えば1年目と3年目とでは違ってきたりしますか?

“鱗(うろこ)”とかデビュー1年目にリリースした曲が、聴いてくれる人の中でどんどん生まれ変わっていくんですよね。そういう受け取ってくれた人の中で曲が育つって初めての感覚なんですよね。それは今、自分自身もそうで、作った時に歌ってた歌とは明らかに違ってくるし、それは聴いてくれる人の中で変わってるからこそ自分も変わっていくというか。ライブで「ここで”鱗(うろこ)”を聴きたい」って思ってもらえる事自体がすごく大切っていうか、そこで歌った時の喜びはお客さんだけじゃなくて僕の中でもあるし。それは色んな曲に対して言える事ですね。だから新曲もこれからどんな風になっていくのかなとか、ライブでどういう風に歌えばいいのかなとか。まあ自分が変えようと思わなくても歌も自然と変わっていくんですよね。

—では変わらない所はどこでしょうか?

なんだろう?基本的には変わってないと思うんだけど(笑)。うーん…、結局音楽しかないっていうのは変わってないかも知れないですね。それって意外と自分では気付いてなかったんですよ。自分はそういうタイプじゃないと思ってたんだけど、結局昔も今も音楽がないとやっていけないという。音楽があってくれるからこそまともなフリしていられるっていうか(笑)。なんか最近そういう気がしてて。当時の方が分かりやすかったと思うんですけど、日記みたいな曲を書いてたんで。自分の暗い部分を曲にしてたから(笑)。でも結局今も音楽で色んな事を言えるから色んな事を理解出来てる気がするんですよね。

—曲を書いて自分を客観的に見るみたいな?

それはすごくあると思う。10代の頃はただ悶々としてるじゃないですか?モヤモヤしててなんか嫌で、それを実際「嫌だ」って言葉にする事で、あ、俺「嫌だ」と思ってんだな、とか。それを知る事で、じゃあどうやったら答えが見つかるのかなっていう風に曲を作っていく事が多かったんですね。もちろん聴いてくれる人の為っていうのは大前提としてあるけど、最近結構そこにまた立ち返るっていうか。まずは自分が何をリアルに感じてどういう言葉でどういう音楽をリスナーとして聴きたいのか、表現者として何を今一番表現したいのかって事を突き詰めていく事が大事なんじゃないのかなって。多分F.A.Dに出てた頃は自分が思ってる事を書くっていうところで終わってたんだと思うんですよ。そこから始まって広がっていくっていう、そこまで意識してやれたらいいなと思ってますね。

—今年もすでにリリースが続いておりますが、今年の目標はありますか?

まずはサードアルバムですね。今作ってるところなんですけど。去年はオリジナルアルバムは出てないので。リリース後にはツアーももちろんあります。そこが結構ドカンと大きいですね。1枚2枚と作ってきて色々と出来た事と出来なかった事があって、とにかくがむしゃらだった1枚目と、分かったようなつもりで分かってないことも多かった2枚目と(笑)。それでもうちょっと腰を据えてじっくりアルバムを作ってるところなので、本当にいい作品を作って届けたいな、と思いますね。ただ、その前に弾き語りアルバムも出るし、ライブも5月にはアコースティックツアーがあって、そのあと夏フェス出て、でまた全国ツアーでっていう、忙しい年になりそうですね。

—最後にメッセージをお願いします。

ライブハウスに出始めの若いミュージシャンや、これから出たいと思ってる人たちに伝えたいのは、僕もそうですけど音楽をやってると本当にたくさんの人と出会えるということなんですよね。それをすごく大切にして欲しいなと思います。そこから何が生まれるか分からないけど、でもきっとそこで出会った人たちってすごく財産になるはずだし色んな事を学べると思うので。もちろん音楽を表現していく事も大事だしそれがやりたくてやってるんだけど、出会いによって人間として豊かになれたらいい曲書けるのかなって自分でも思うので、たくさんの人と出会ってほしいですね。なんて偉そうな事を言って(笑)。そんな風に思います。


■LIVE情報@F.A.D YOKOHAMA
‘10.3.22 [mon] “AND秦 @F.A.D YOKOHAMA”
【出演】秦 基博 / ※共演者あり
OPEN 17:00 / START 18:00  ADV ¥3500 / DOOR なし
※本公演のチケットは完売致しました。当日券の販売はございません。


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(http://www.office-augusta.com/hata/)